派遣社員として働く際には、社会保険のことを詳しく知っておきたいものです。しかし、ひとくちに社会保険といっても種類はさまざまで、加入条件も異なります。この記事では、派遣社員の社会保険の加入条件やメリットをはじめ、加入の際に注意すべき点についても詳しく解説していきます。
派遣社員が加入できる社会保険の種類
さまざまな種類が存在する社会保険ですが、加入対象となる労働条件がそれぞれで異なるため注意が必要です。社会保険とは、主に日常生活を送るうえで起こりうる病気やけがなどのリスクや出産や介護に関わる場面で補償を受けることができる制度です。
条件を満たしてさえいれば、雇用形態に関係なく加入できます。社会保険の内容は健康保険、介護保険、厚生年金保険、雇用保険、労働者災害補償保険の5つです。その中でも健康保険、介護保険、厚生年金保険を「社会保険」、雇用保険と労働者災害補償保険を「労働保険」ともいいます。
健康保険
病気や怪我をしてしまった際に関係するのが健康保険です。医療機関を受診するにあたってかかる費用の自己負担額を3割に抑えることができます。
医療機関での診療以外にも、薬の処方を受けた時の費用補助や、手術・入院にかかる費用が高額になってしまった際に受けられる費用補助もあります。病気や怪我以外にも出産一時金や出産手当金もこれに含まれ、病気や怪我で働けなくなった場合には傷病手当金の受給も可能です。
雇用保険
労働者が失業した際に給付金を受け取ることができたり、再就職への助けとなる保険です。会社都合による退職、自己都合による退職のどちらでも、失業してから就職活動をしている間の生活を支えるための失業手当が給付されます。
失業手当の受給資格者のうち、再就職手当が支給されるケースもあります。教育訓練を受講、修了した際に給付される教育訓練給付などもあり、求職活動を支援するとともに幅広く働くことをサポートしてくれる保険です。一定の労働時間を超える者は、雇用保険に加入しなければいけません。
介護保険
一般的に高齢者をはじめとし、何らかの疾病で介護が必要になってしまった人を支えるための保険です。居宅サービスや施設サービス、介護予防サービスなどの介護にかかる費用を給付し、適切なサービスを受けられるようにサポートします。
厚生年金保険
高齢になったときや病気や怪我により働かなくなったとき、または亡くなった場合に遺族のその後の生活を支えるための「年金」が給付される保険です。
労働者災害補償保険
勤務中や通勤中に起きた事故によって、怪我や障害が残ってしまった場合に保険金が給付されます。労働者のその家族を守るための保険で「労災」と呼ばれています。怪我や障害だけでなく、亡くなってしまった場合にも遺族に対して給付金が支給されるのが特徴です。
社会保険に加入することのメリット
健康保険、介護保険、厚生年金保険を含む「社会保険」と雇用保険と労働者災害補償保険を含む「労働保険」に分けて、それぞれのメリットを解説していきます。
︎社会保険に加入するメリット
社会保険への加入は、給付金などの保障はもちろんのこと、必要なサポートを迅速に受けることが可能になります。もしもの場合に必要な医療費の負担が少なくなったり、休業せざるを得なくなった場合のサポートを受けることができるため生活への不安が軽くなるでしょう。
また、国民健康保険や国民年金の場合は被保険者が保険料を全額負担する決まりになっていますが、健康保険や厚生年金保険に加入すると会社が保険料の半分を負担してくれます。必要な保障はそのままに、負担する保険料が軽減されるのも大きなメリットです。
労働保険(雇用保険)に加入するメリット
労働保険は雇用保険と労働者災害補償保険を含みますが、労働条件等によっては雇用保険にのみ加入するケースも少なくありません。他の保険にかかる保険料が引かれる心配がないため、保険料を節約することができます。
労働保険に加入する最大のメリットは、事故による怪我や突然の退職などの不測の事態に遭遇してしまった際に給付金が受け取れる点です。
雇用保険に加入するメリットとしては、離職時に求職者給付や就職促進給付、雇用継続給付、教育訓練給付など大きく分けて4つの給付を受けられることがあげられます。細かく分類すると、全部で19種類もの生活に必要な給付が失業後も受けられます。
加入条件や注意点
派遣社員であっても社会保険に加入することは可能ですが、一定の条件を満たしていることが前提となります。社会保険の加入条件や、注意点について詳しく解説していきます。
社会保険(健康保険・厚生年金保険・介護保険)の場合
社会保険のうち健康保険は、1週間の労働時間が20時間以上かつ2ヶ月以上の雇用が見込まれる場合に加え、従業員数101人以下の事業所で月額8万8千円以上で働く学生でない労働者が加入対象となります。
派遣社員はもちろん、パートやアルバイトであってもこれらの条件に当てはまる場合は健康保険に加入が可能です。厚生年金保険は、社会保険の適用事業所において常時勤務する労働者は加入義務があります。
加入条件は健康保険と同様ですが、年齢の上限が異なります。健康保険が75歳未満であるのに対して厚生年金保険は70歳未満なので注意しましょう。
また、1日単位で働く者や、2ヶ月以内の契約の場合には該当しません。介護保険に関してはとくに細かく定められた条件はなく、サービスを利用するしないに関わらず40歳以上の全ての人が加入対象です。
雇用保険の場合
1週間に20時間以上の労働時間と、31日以上の雇用見込みさえあれば加入することができます。平成22年4月1日以前は「契約期間が31日以上であること」が条件でしたが、現在では31日以上になる見込みがあれば加入できるようになりました。
派遣社員であっても、上記の2つの条件をクリアできていれば雇用保険の加入対象になります。基準を満たす労働者に関して法律で加入が義務付けられているため、たとえ入りたくなくても加入しなければはらない保険です。
離職する前の2年の間に被保険者期間が12ヶ月以上あれば失業保険等を受給できるため、給付を受けるためにはその期間は雇用保険に加入しておく必要があります。
︎労働者災害補償保険の場合
労働者を1人でも雇用する場合は加入が義務づけられている保険であるため、就業した時点で被保険者資格を得ることになります。保険料は雇い主側が全額負担するため、保険料は一切かかりません。
まとめ
社会保険や雇用保険とは、一般的に企業に勤める正社員のための制度だと思っていた人も多いのではないでしょうか。派遣社員が加入できるかどうかは条件を満たしているかどうかや働き方にもよりますが、正社員と同じように加入することは可能です。加入手続きに関しては基本的には事業主が行ってくれるため、自身で行う必要はありません。派遣社員の場合は、派遣元企業にお願いしましょう。社会保険は給料から天引きで保険料を納めるため手取りが少なくなってしまい、損に感じる人もいるかもしれません。しかし、もしもの事態にさまざまなメリットを受けることができる保険は、今後の不安を軽減させてくれることでしょう。雇用形態に関わらず、同じように保障や給付を受けられるのでまだ加入していない場合には派遣元企業に確認してみることをおすすめします。